「アトピーひどくなるから掻くのをやめなさい」
生まれながらにアトピーの人は親から言われたことがあるはず。
正しいですし、必要な注意です。
だけど、自分の子供には「アトピーひどくなるから掻くのをやめなさい」と注意するのを控えようと思っています。
猫を見ていて気づきました。 かゆいから掻くのではなく、掻きたいから掻いているのではないかと。
「掻いちゃダメ」
この注意が「アトピー悪化の原因」になることに気づいたのです。
- アトピーのかゆみは普通じゃない。「蚊にさされたような」は嘘
- 「掻いている」自覚がない。いつの間にか掻いている
- 「掻いてはいけない」なんて言われなくてもわかっている
- 「掻く」ことと向き合って一緒に悩んで一緒に解決策を探す姿勢で寄り添いたい
- 「掻く」アクションが大切なんだと猫から学んだ
アトピーのかゆみは普通じゃない。「蚊にさされたような」は嘘
アトピーじゃない人は「どうしてかゆみを我慢できないの?」と思うみたいです。
アトピーのかゆみは普通じゃありません。
普通のかゆみなら肌が掻き壊れて血が出るまで掻きません。
血が出た後も掻き続けることもあります。 それほど強烈な衝動があるかゆみなのです。 意思の力だけで「我慢」できるほどやさしい相手では無いのです。
「かゆみ」をつたえる言葉が少ないのもツラいことだと思います。
かゆみを例えるとき「蚊にさされた」と形容することが多いです。というか他に言葉の選択肢、無くないですか?
「蚊にさされた」と表現するしかないのですが、アトピーのかゆみはそんなものではありません。 桁違い、段違いです。
「掻いている」自覚がない。いつの間にか掻いている
「掻くぞ!」とアトピーを掻き始めることは稀で、気づいたら猫に見られていたように、無自覚に掻いているのです。
アトピーのかゆみは巧妙です。 「掻かないぞ!」と気を張っているときには身を潜め、ふっと気が抜けたタイミングを逃さず襲い掛かってくるのです。
無自覚に掻き始め、掻いてる途中で「あっ」っとなるのです。
かゆみは「見てわからない」のもツライ
「掻かないで」の注意でとても困るのが「見てもかゆみで困っているかがわからない」ことです。
だからどうしても「掻いちゃダメ」と注意するタイミングは遅くなります。
・掻いている最中
・掻いた痕を見て
こうなっちゃいます。
声をかける側は「あなたのアトピーが悪化しないように」という100%の善意です。
でも、声をかけられた側は「怒られている」ように感じるのです。 実際「やっちゃって」ますからね。
繰り返すごとに罪悪感と嫌悪感が募っていくのです。
アドバイスがストレスになる。「掻いちゃダメ」がアトピー悪化の原因になる
「掻いちゃダメ」というアドバイスがストレスになり、余計に掻いてしまう。
ストレスを感じるのはアトピー側だけではありません。「掻いちゃダメ」という側もストレスを感じます。
言ったことをやってもらえないのはストレスですよね?
「何回も同じことを言わせないで…!」となってしまうと最悪なのは言うまでもありません。
関係性が悪化するのです。 悪化した関係性はストレス要因です。
「掻いちゃダメ」がアトピー悪化の原因になるのです。
「掻いてはいけない」なんて言われなくてもわかっている
そもそも「掻いちゃダメ」というのは本人がいちばん良く理解しています。
それでも掻いてしまうのです。 掻かないなんて無理なのです。 気合でがまんできるようなものではないのです。
「どうしてかゆみ止めを使わないの!」と思うかもしれません。
かゆみ止めも「無いよりマシ」程度のものだと思ってください。 塗る前に衝動的に掻いてしまうことがほとんどですし、塗ってもかゆい。
かゆみ止めはかゆくなる前に塗るのが効果的ですが、アトピーのかゆみはほぼ全身に及びますから現実的ではありません。
かゆみ止めが有効に作用しないから辛いのです。
かゆみ対策用品は山ほどありますが、誰にとっても100%効果のあるかゆみ対策用品はありません。
「掻かないなんて無理」なのです。 これは本人がいちばん良く理解しています。
「どれだけツライか教えてよ」「教えてくれなきゃわからないよ」 最もな問いかけですが厳しい問いかけです。
なぜなら伝える手段がないからです。 このツラさはアトピーの人以外には理解できません。
「誰も食べたことがない料理の味」を言葉で伝えるような難易度になります。 言語化するには難しすぎるのです。
掻かないほうが良いなんてことは本人がいちばんわかっています。 わかっているけどできない歯がゆさがあります。
それをあらためて指摘しても良くなるとは思えないので「掻く」ことを受け入れて一緒に悩む姿勢で子供に接したいのです。
「掻く」ことと向き合って一緒に悩んで一緒に解決策を探す姿勢で寄り添いたい
「アトピーのツラさはアトピーにしかわからない」
これを理解したうえで寄り添う事こそアトピーを改善させる唯一の方法だと思います。
アトピーのかゆみ衝動は本当に尋常なものではないのです。 安易に「掻く」という行為を制限すると逆効果になることをお話ししました。
「掻く」ことで肌が掻き壊れるのは事実ですが、「掻く」ことで心が守られることもまた事実なのです。
「掻く」ことを認めたうえで「どう掻くか」を一緒に考えていくことが大切です。
掻くことが問題なのではなく、掻いたときの肌ダメージが問題と考えて、ダメージが少なくなるにはどうすればいいかを考えます。
シンプルかつ確実に効果のある方法は深爪です。
これは私も実践済みで効果があった方法です。 「特に寝ている間に掻く」対策に効果的です。
よく切れる爪切りを使うのがポイントです。 爪やすりでも良いのですが僕の場合は面倒でやらなくなりましたので、やすりが必要ないくらいきれいに切れる爪切りのほうが便利です。
※よく切れる爪切りにニッパー爪切りが多いだけで、ニッパー爪切りが良いわけではありません。
どうして爪やすりが必要かアトピーじゃない人はピンとこないと思います。 やすりをかけていない爪はザラザラしています。 アトピーはこのザラザラした爪を使って肌を掻くのです。
いくら深爪してもザラザラで掻けてしまっては意味がありませんので、爪切り後の処理が大切なのです。
掻かない対策は非常に難しいです。というか無理だと思います。本気でやるなら手を縛り付けるくらいしかありません。
アトピーが本気を出すとタオルケット等の寝具で効率よく肌を掻けるようになりますし、手袋しても手袋の布をつまんでこすり付けるようにして指を掻きます。
慣れてくると布を使って掻くのは、爪で掻くより効率的に肌を掻けるようになってしまうので(布で肌をこそぎ落とすイメージ)、やけどしたような傷跡(皮膚がずるっと剥けた感じ)が残ります。
「掻かない」を徹底するのは現実的ではありませんし、布を使って掻く技術を覚えられてしまうと厄介なので、爪で掻くことを制限せず、爪の管理を徹底してダメージを抑える教育をする予定です。
「掻く」アクションが大切なんだと猫から学んだ
猫の行動を見ていて思いました。 結果と同じくらい行動ってだいじなんだなって。
後ろ足で首掻くとき、明らかにちゃんと掻けていない時がありますけれど、それでも満足そうな顔してますもん。
この時「かゆいから掻く」のほかに「思ったとおりの行動をする」ことも大切なんだと気づきました。
そう考えると「掻いちゃダメ」は生理的な反応を精神論でどうにかしようとしているワケですから難しくて当たり前なのです。
かゆくなくなれば良い!って単純な話ではないと思うんですよね。 かゆみに対してかゆみ止めを塗っても「掻きたい」という生理的衝動は対処できていない。
結局この「生理的な衝動」が解消できないとストレスが溜まって。決壊して。抵抗できない寝ている間に掻いたりもう嫌ってなったりすると思うんですよ。
だから子供と一緒に「掻きかた」とちゃんと向き合っていこうと思っています。
このブログのテーマでもあるのですが、アトピー悪化の原因はストレスだと思っています。
「掻く」ことにはストレスを無くす力があることは間違いありません。 「掻く」ことを認めて子供と向き合い、アトピーとの適切な距離感を教えてあげるのがアトピーの親の務めだと考えて行動します。